ドレスコード-ファッションに隠されたメッセージ(リチャード・トンプソン・フォード 著)

眼横鼻直(教員おすすめ図書)
Date:2025.03.01

書名 「ドレスコード-ファッションに隠されたメッセージ」
著者 リチャード・トンプソン・フォード
訳者 服部 由美
出版社 パンローリング
出版年 2022年
請求番号 配架準備中

現代社会において、服装についてのルール・社会的拘束としてのドレスコードは至る所で見受けられる。学生の皆さんも高校までの学校やアルバイト先の職場で服装に関する拘束を受けた経験はあるだろう。

本書は、中世後期およびルネサンス時代から現代までのさまざまなドレスコードを対象に、「人びとがなぜ、どのようにファッションを管理しようとしてきたのか」を検討したものである。本書の著者は、米国スタンフォード大学ロースクールで市民権および差別禁止法を専門に研究を行っている法学者である。そのため本書では、歴史的な分析に加えて、欧米を中心とした法的議論や裁判例も詳しく紹介されている。

本書第16章で言及されているように、ドレスコードは評者の専門分野である知的財産法(特に商標法)とも関連する。高級ファッションブランドの衣服等の模倣品を販売する行為が商標権侵害に該当すると判示した米国の裁判例では、模倣品が市場に大量に出回り、高級な商品が持つプレステージや希少性が失われてしまうことを防ぐという理由づけが用いられることがある。このように商標法を現代の奢侈禁止規範として機能させることの是非については、近年商標法の分野で盛んに議論されるようになっている。

以上のとおり、本書はファッションと法律の関係に関心を持つ者にとって重要な文献の一つである。もっとも、本書は、一般読者向けに平易に書かれており、口絵の絵画や写真を眺めるだけでも楽しい。ファッションの歴史やファッションに関する社会問題などに関心を持つ幅広い読者にお勧めできる一冊である。

法学部 准教授 小嶋 崇弘 

< 前の記事へ