陸上競技部

DATE:2023.03.21陸上競技部

第99回箱根駅伝インタビュー【大八木弘明監督】

駒大陸上競技部を28年間にわたって指導してきた大八木弘明監督(64)は今年度をもって、監督人生に終止符を打つことを発表した。今後は、総監督として田澤廉(経4)を中心に鈴木芽吹(営3)、篠原倖太朗(地2)、佐藤圭汰(経1)を指導していく。

今回は、大八木監督の箱根駅伝の振り返りや指導理念、今後についてのインタビューをお届けする。(聞き手・写真:中西真雪)

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箱根駅伝優勝報告会にて笑顔の大八木監督

◆大八木弘明監督

――今回の箱根駅伝を振り返って
「選手たちが三冠を狙うということで、しっかり気持ちもいれてくれたので、うれしい」

――キーポイントになったのはどこか。理由は
「山。1年生が不安なところはあった。田澤の体調があったので、田澤がしっかりつないでくれたのも大きかった」

――調子が戻りきっていなかった田澤廉選手を起用するにあたって、2人で何か話したことは
「本人がやれるかどうかというのが一番だった。本人とは話をして『やれる。やる』ということだったので『やるんだったら慎重に行けよ』というのは言った」

――5区・6区に2人の1年生を起用した理由は
「5区の山川拓馬(営1)は練習をしっかりやれていたということ。練習が4月に入学してきてからちゃんと練習を積めていた。出雲駅伝・全日本大学駅伝と見ていたら出雲は記録会でいい結果で走ってくれたし、全日本4区で区間賞も取ってくれた。試合も『あまり緊張しないんだろうな』という思いがあった。メンタル的に強い子。ロード向きでしっかり走り込みもしていたので、5区に山川を使った。山が本人が得意だと言っていたのもあった。6区伊藤蒼唯(政1)もしっかり走っていたから。練習量が最後は決め手。練習をしっかりやれていた者がしっかり走れていた」

――今まで成し遂げられなかった三冠をこのタイミングで達成できた要因をどう考えるか
「チームが1つになっていたということ。昨年の4月から選手たちが『三冠を絶対取るんだ』というのと層の厚いチームを目指していた。スピードは、駒大はレベルアップしてきたが、最終的な課題は昨年度も同様だったがスタミナだった。昨年4月からスタミナづくりをしっかりしていこうというのがあった。チームの底上げができたというのがある」

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3冠達成報告会で花束を受け取る大八木監督

――監督を勇退することを決めたのはいつごろか。きっかけは何があったのか
「1、2年前くらいから『いつやめようかな』というのはあった(笑)本当にやめようと思ったのは昨年に入ってから『今年(2022年中)で終わろうかな』と思った。きっかけは自分の体力が少しずつきつくなってきたのもある。なかなか50人を見るのがきつくなってきた。女房もずっと賄いをやってきたので、女房を楽させようという思いもあった」

――夏合宿のときに田澤選手・山野力(市4)選手・円健介(仏4)選手には先に監督勇退について話をしたそうだが、なぜこの3人を選んだのか
「選抜合宿などで常に選手を引っ張ってくれていた3人だったので、この3人に話をしておこうと思った。後半は『思い』でやってもらいたいなという思いがあった」

――今の3年生までの代まで教えるのではないかと思っている人もいたが、このタイミングを選んだのはなぜか
「自分の中のけじめ。1つの区切り。中国の言葉で『百里を行く者は九十を半ばとす』という言葉がある。それと同じく、やりたいことを少し残して目指したいものがあったから、世界で戦う選手を作りたいという思いもあったので。ここがちょうどいい時かなと思った」

――監督として迎える最後の箱根駅伝を終えて、現在どのような気持ちか
「ちょっとほっとしたような気持ち。4年生3人と走った子供たちに素晴らしいプレゼントをもらったので、私としては28年間よくやってきたという感じ」

――指導人生で一番印象に残っている出来事は
「コーチに就任して5年目で箱根駅伝初優勝した時(2000年)」

――最近指導方法を変えたと聞くが、何かきっかけがあったのか
「時代が変わってきて、選手自体も変わってきた。なかなか私だけの一方通行じゃ、選手も動かないだろうし、考えさせる練習を取り入れていかないといけない。いろいろな練習のスケジュールのなかで、選択肢を与えてどちらにするか選手たちに考えさせたり、疑問を持たせて走らせたり。とにかく考えさせて練習に取り組むということをやり始めた。『なぜ』という疑問を持ちながら『なぜこのような練習をしたら強くなるのか』『なぜこういう練習が必要なのか』『なぜこのような練習をしたらタイムが伸びるのか』を問いかけながら、疑問を持ちながらトレーニングをするという大切さ、自分で考えられる大切さを含めてやらせるようにした」

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グラウンドで指導する大八木監督

――監督が指導した中で印象に残っている選手はいるか。理由は
「いっぱいいるなあ(笑)ヘッドコーチからずっと見てきたから。1人というより何十人という素晴らしい子供たちに恵まれた。藤田敦史ヘッドコーチ(46)とか西田隆維(00年卒)とか宇賀地強(10年卒)とか深津卓也(10年卒、旭化成コーチ)とか村山謙太(15年卒、旭化成)とか中村匠吾(15年卒、富士通)とか、今ここにいる選手だと田澤とか。いっぱいいすぎて。手はかかったが、素晴らしい子供たち」

――指導してきた中で箱根駅伝の最強オーダーを組むなら(「全員が絶好調だと仮定して」とお願いしました)
「難しいなあ。1区中村。2区藤田。3区田澤。4区(鈴木)芽吹。山は大八木かな(笑)6区は千葉健太(13年卒)。安定感でいったら千葉。7区宇賀地強(10年卒)。8区松下龍治(03年卒)。9区西田隆維。アンカーは高橋正仁(02年卒)。そんな感覚があるかもしれない(笑)」

――大八木京子さんが寮母として支えてくださっていると思うが、今後はその面をどうしていくのか
「藤田がやりやすいようにやってくれるのが一番。藤田の意向でこれから変わっていく」

――今後監督になる藤田ヘッドコーチには、どのような監督になってほしいか
「自分のカラーを出して、駒大を常勝軍団にしていってくれればいいと思う」

――総監督になる話もあるが、どのようなことをしていくのか
「全体的なものを見たり、田澤を見たり。一緒に練習をやりたいという子(鈴木、篠原、佐藤)をやるときには見たり。マネジメントなどを考えてやってあげようと思っている。

――今後何をしたいか
「旅行はしたい。温泉とかに行ってのんびりしたい。優勝旅行もどこかにしようかなとは思っている。考えてはいる」

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