~襷~ 相手の心を掴む、実力と信頼関係
【襷(たすき)】は、駒澤大学に通う皆さんが「どのような社会人生活を送りたいか」をイメージできる、キャリアセンター発の連載企画です。在学生が現在活躍する駒大OB・OGを訪問し、先輩たちのリアルな声をお届けします。
岸浪恭子先輩に、法学部4年 佐々木が取材しました!(2025年2月取材)
実力と責任感を身につけた駒澤大学高等学校の吹奏楽部
高校時代、どんな活動に時間を割いていましたか?
高校は駒澤大学高等学校に通い、吹奏楽部に所属しクラリネットを担当していました。2年生の後半からは企画長という役職を務め、部内行事の企画・運営を一手に引き受けていました。
部内行事はカラオケ大会などに始まり、他にも部外の行事での作成物や、新入生歓迎会、送別会なども担当し、3ヶ月に1回は必ずイベントを実施していました。
今も活かせている高校時代の経験はありますか?
この経験は現在の仕事にも直結しているほど、私の考え方や行動基準の土台になっています。期限を絶対に守ることや、お名前や企業名の表記を間違えないことなど、細部へのこだわりが身につきました。
また、15分前行動も身につき、ミーティングに遅れることを嫌い、初めての場所に行くときは入念に調べてから行くようにしています。
駒高吹奏楽部はどんな場所でしたか?
吹奏楽部は実力主義の世界でした。ここで「実力があってこそ、自分の考えが聞いてもらえる」という重要な教訓を学びました。実力がないと話を聞いてもらえない環境の中で、不用意な反抗は無駄だという考え方が身につきました。
また、時には自分の思い通りにならない、考えがうまく伝わらないなど、歯がゆい思いをすることもありました。たとえそれが周りから理不尽に見えていたとしても、言い訳をせずに自分の準備不足と捉え、切り替えたうえで二度同じ過ちをしないための改善策を立てる力が身に付きました。
アルバイトで培った観察力とマネジメント力
大学時代はどのような活動をされていましたか?
大学時代、イタリアンレストランで4年間アルバイトをし、バイトリーダーも務めました。180席、多い時は従業員が100人もいる大規模な店舗で、マネジメントスキルを磨きました。
部活動とアルバイトの大きな違いは、メンバーの目的意識の多様さです。部活では同じ熱量で何かを目指しますが、アルバイトではお金を稼ぐためだけの人もいれば、お客様にリピートして貰うことにやりがいを見出している人もいます。そんな異なる目的を持った人たちをどうやって一つにまとめるかを大学時代は考えていました。
人をまとめる上で心がけていたことはありますか?
人をまとめるにあたり、心がけていたのは、一人ひとりの特性を見極めること。その人の得意なことやモチベーションが上がる瞬間を常に考えていました。例えば、私自身はお客さんがもう一度自分を指名してくれることにやりがいを感じていましたが、他のスタッフは1時間で何組回せたかにモチベーションを感じるかもしれません。そうした違いに合わせて、大きく二軸に分けて教育をしていました。
接客業は得意そうな印象ですが苦労されたことはありましたか?
レストランでのアルバイト経験で培ったもう一つのスキルが、幅広い客層に対応できる接客術です。見た目や話し方から「若くて軽そう」と見られがちでしたが、その印象を覆す戦略を練りました。
若い女の子というだけで「どうせキャピキャピしている」と思われがちな中、食事に関するメニューやワインのペアリングの知識を身につけることで、周囲の印象を変えることに成功しました。
意外と知識があるというギャップを武器にするようになり、常に知識のインプットを怠らず、シーズンごとのメニューやワインについての勉強を欠かしませんでした。
「人とのつながり」が仕事での可能性を広げる
どのような就職活動をされていましたか?
就職活動では広告業界をほぼ絞って受けていました。情報収集で力を入れたのはOB訪問です。自分で調べるよりも人と話す方がインプットもできるし、楽しいと考えていました。説明会をただ聞いていても、会社の資本金がいくらかといった情報は得られても、実際の社内の動きや雰囲気は明瞭には分かりません。それならば実際に働いている人に会った方が早いと思い、とにかくOB・OG訪問を積極的に行いました。
就活時の自己分析も同様で、自分一人で考えるよりも、様々な業界の方と会話することで自分の強みや向いている仕事が見えてきました。人との出会いを大切にするこの姿勢は、現在も変わりません。
現在のお仕事内容を教えてください
現在、PR代理店でクライアントの広報・マーケティング業務を担当しています。クライアントの広報部署やマーケティング部署と一緒に、新商品のローンチ方法やCM、イベントの企画・提案・実走を行っています。
企画だけでなく実走もするので、時には黒スーツで現場に立つこともあります。すべてのプロセスに関われることが今の会社の良いところです。
入社してからキャリアについて考える事はありましたか?
2年目の終わりに一度転職を考えましたが、部署異動をきっかけに現在の会社に残ることを決意しました。そして3年目になった今、クライアントからの信頼も厚くなってきています。最近では、「1000万円預けるから何でも提案して」と言ってもらえることが増え、そういった信頼関係を築くことが楽しみになってきています。
PR業界での知識や人脈をどのように広げていったのですか?
PR業界に入ってからは、メディアの知識を身につけるために人と会う機会を積極的に作りました。具体的には、テレビ局のプロデューサーやディレクターと情報交換をしていました。直接電話をかけて「今から話を聞けないか」と尋ね、直接お話を聞きに回ることもしていました。
当時は、担当していた某うどんチェーンの新作サンプルを届けながらテレビ局内を尋ね歩いていて、「新商品探してる人いませんか?」って聞くと誰かを紹介してくれたりもして、数珠つなぎに多くの方々に名前と顔を覚えて貰いながら生きた情報をいただいてました。
信頼関係を築くうえで意識していることはありますか?
大切にしているのは「期待以上のパフォーマンス」です。月200万円の契約なら、この仕事量が妥当という考え方ではなく、それを考えずにとにかく相手のために動き回るようにしています。
そうすると「それじゃ足りないから、もっとお金を出すよ」と言われることがあり、先に自らが「与える」ことの大切さを実感しています。
視野広く、他者に伴走できる姿勢を目指して
後輩への指導で心がけていることはありますか?
今期からマネージャーに昇格しますが、後輩には伴走型のコミュニケーションを心がけています。「これやっといて」というよりは「こういう風にお願いしたいんだけど、行けそう?」と聞き、「行けます」と言われたら「じゃあお願いするね」という相互理解を大切にしています。依頼したら進捗を聞き、一緒にやっているという安心感を持ってもらうことが大事だと考えています。
また、後輩の将来を考えた業務配分も心がけています。定期的に「どういう風になりたいか、どういう仕事をしていきたいか」を聞き、なるべく希望に添うような業務を振るようにしています。例えば撮影があるときには一緒に立ち会いに行くよう誘い、経験を増やしてもらうようにしています。
仕事において大切にしていることは何ですか?
「人を助けられる余裕」を常に持つことを大切にしています。仕事において、誰かが締め切りに間に合わなくなったときに「私がやるよ」と言える実力と余裕を持っておきたいという思いから、自分の仕事をギリギリになって間に合わせるようなことは絶対しません。
また、周囲のスケジュールにも気を配り、必要以上の負担がかからないよう気を付けています。みんなのカレンダーを見て、先輩が必要以上の仕事をしていたら「私がやります」と言うようにしています。先輩でもできる仕事を自分がやることで、全体のパフォーマンスが上がると考えています。
ご自身のキャリアプランについてはどう考えていますか?
意外かもしれませんが、明確なキャリアプランは持っていません。自分がどうなりたいとか、3年後にこうしたいとか、実はないのです。考えの中心は自分軸ではないと感じており、私の原動力は「目の前の人を幸せにすること」です。
お仕事の原動力は何ですか?
後輩にも仕事を楽しいと思ってもらいたいです。「働かなきゃ」と思って働くより「こうやったら楽しいじゃん」と思える方が楽しいはずです。できることが増えた方が自分も信頼を得られるし、できる仕事も増えます。そっちの方が楽しいという考え方が根底にあります。
後輩へのメッセージ
社会人の方が学生の時よりも絶対に楽しいので、就活は無理せず頑張ってほしいと思います。就活をすると自信がなくなることもあるけれど、第一志望の会社に入れないとしても、それはその会社が自分に合わなかっただけです。そんなに気を落とすことではないし、自分に合う会社に絶対入るようになっているので心配しないでください。
自己分析をしながら自分と向き合う時間として就活期間を使ってもらいたいと思います。無理せず自分に合ったやり方を見つけて頑張ってください。
おわりに ~インタビュアーの感想~
今回岸浪先輩に取材をさせていただき、どのエピソードにも「周囲の人々を幸せにしたい」という強い意志を感じました。
一つ一つの仕事の向き合い方についても、人一倍情熱を持ちながらも、常にチームの効率を重視し、客観的な広い視野を持つことを大切にされていました。常に業務で関わる全ての人ためにご自身にできることや役割について分析し、周りを思いやり、喜んでもらいたいという気持ちこそが岸浪先輩の全ての原動力になっていると感じました。
私自身も春から新社会人になりますが、単に自己成長のためではなく、周りを巻き込み人々を幸せできるように頑張りたいと思います。この度は貴重な機会をいただきありがとうございました!
今回は岸浪先輩もインタビュアーの佐々木さんも駒澤大学高等学校の卒業生であり、同校の吹奏楽部出身という、同じ環境で青春を過ごした生粋の先輩・後輩の間柄での対談でした!
[著]・[聞] 法学部 政治学科4年_佐々木玲香
[写] キャリアセンター_山口魁紀
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